訪問介護の仕事をしていると、利用者さんとの何気ない会話の中で、人生の先輩ならではの言葉に出会うことがあります。
ある日、利用者Sさんに「夫婦円満の秘訣って何ですか?」と聞いてみました。
Sさんは数年前にご主人を亡くされ、今は一人暮らしをされています。
以前はご夫婦で飲食店を営み、地域では有名なおかみさんだったそうです。ご主人と力を合わせてお店を切り盛りしてきた思い出を、時折笑顔で話してくださいます。
そんなSさんは、少し考えてからこう話してくださいました。
「やっぱり夫婦は、一緒の部屋で寝て、一緒のテレビを観て、意見を言い合ったり話さんとだめだわ。」
そして続けて、
「いつまでも思いやりの気持ちやね。」
その言葉は、とても自然で飾り気がありませんでした。
でも、何十年もご夫婦で人生を歩んできた方だからこそ、その一言には重みがありました。
今はご主人を亡くされ、お一人で生活されています。数年前には自宅の廊下で転倒し、
大腿骨を骨折して入院されたこともありました。
それでも、ご主人との思い出を懐かしそうに話される表情からは、
「一緒に歩んだ時間」がどれほど大切だったかが伝わってきます。
私はその言葉を聞いて、「夫婦円満とは特別なことではなく、
毎日の何気ない時間を一緒に過ごすことなのかもしれない」と感じました。
同じ部屋で過ごすこと。
同じテレビを見て笑うこと。
時には意見が違っても話し合うこと。
そして、お互いを思いやること。
どれも当たり前のようで、忙しい毎日の中では忘れてしまいがちなことです。
訪問介護の仕事では、掃除や調理、身体介護だけでなく、
利用者さんの人生そのものに触れる機会があります。
私は介護をする立場ですが、人生について教えていただくことの方が多いのかもしれません。
利用者さんとの会話は、私にとって毎日の楽しみであり、
自分自身の生き方を見つめ直す大切な時間でもあります。
50代になると、子育てがひと段落したり、夫婦二人の時間が増えたりする方も多いのではないでしょうか。
だからこそ、利用者さんからいただいた「一緒に過ごす時間と思いやりが大切」という言葉を、
私自身もこれからの人生の道しるべにしていきたいと思っています。
